浅田次郎さんの「憑神」を読みました。
幕末の江戸、彦四郎は貧乏御家人の二男に生まれた。
文武に秀でていたので
幸い良い家の婿養子に迎えられたが
廃退した武家社会の中で
まっとうに武士の道を貫こうとする
彦四郎は煙たがられ
長男が誕生するとお役御免とばかりに
義父の策略で追い出されてしまう。
生家に戻っても
出戻り婿の立場はいいわけもなく
夜鳴き蕎麦の一杯の小遣いもままならない。
母にもらったお金で蕎麦を食べ
蕎麦屋の親父におごられて一杯の酒を飲み
酔いにまかせて川原の草に埋もれた小さな祠に手を合わせ
立身出世を願った。
霊験あらたかな事に、すぐに神様が現れたが
それはなんと貧乏神だった…
文武両道に秀で人格も素晴しく、真面目で熱血な彦四郎。
そんな人柄など関係なく不幸はやってくる。
愛する妻と子どもを取り戻す為に
立身出世を願うのは人間としてごくごく当たり前の感情ではないでしょうか。
それなのに次から次からおそってくる不幸…
彦四郎が手を合わせた祠は「三巡」の神様。
「三巡」とは貧乏神、疫病神、死神…
そんな神様に憑かれてしまったら…
考えただけで恐ろしいです(--;
それでも一生懸命に前向きに生きようとする彦四郎。
可笑しくて哀しい話です。
そして最後にこうくるか…
何のために人間は生きているのか、を考えさせられる小説ですね。
面白かったです^^
この「憑神」は妻夫木聡さんの主演で
映画化され、近々公開されるそうです。
私の主人公のイメージよりはちょっと若いかな、とは思うけど
好きな俳優さんだし、最初のずっこけぶりと
ラストのきりっとした彦四郎と両方みてみたいですね。