小春日記

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飯嶋和一「出星前夜」

飯嶋和一さんの「出星前夜」を読みました。
d0045063_18445918.jpg『黄金旅風』で
有家の子どもを救うために
呼ばれた外崎恵舟。
しかし、この外崎が
南目の代官所に追放されてしまう。

この事件に怒りを覚えた
矢矩鍬之介を筆頭とする若衆が終結。
折しも代官所で火災が発生し、
代官所はこの火災を集結した
若衆の仕業と決め討伐に向かうが、返り討ちにあってしまう。

それは、これまで一切の
抵抗をしてこなかった旧キリシタンの土地で起こった
初めての武装蜂起だった・・。
                        AmazonHPより

この作品もローカル紙の書評欄で読んで
面白そうだったので借りて見ました。


教科書で一度は習った事のある「島原の乱」を描いた作品です。

第一部は、実際のとれ高の2倍の年貢を納めねばならず
そのために常に貧困と飢餓と病気に苦しみながら
それでも耐え続けた島原の南部の農民の姿と
領主松倉氏の悪政を描き、
第二部では、我慢に我慢を重ねていた島原の農民が
ついに一揆を起こし、松倉氏だけでなく
九州各藩、そして幕府軍までを相手に戦う様子が書かれています。

どこまでが史実に正確に書かれているのかは知りません。
小説ですから実際には存在しない登場人物もいるはずです。
でもそんな事は全く感じさせません。

特に第二部の原城跡をめぐる攻防は
生々しすぎてまるで映像を見せられている気分です。
実はこの手の描写を読むのはとても苦手なんですが…(--;


この作品は島原の乱を中心に書かれていますが
もう一つ物語があります。
飢餓の中で流行り病が広がり、
死んでいく幼い子どもたちを救おうとする慶舟先生と
恵舟の弟子となった寿安という青年の話です。

長崎からはるばるやってきて
献身的に子どもたちの治療をしている恵舟先生を
島原南目の代官所では有無を言わさずに
長崎へ帰してしまいます。

寿安は代官所の役人に腹をたて、
また圧政に文句も言わずひたすら耐えるだけの大人にも
愛想をつかし、一人キリシタンの教会跡にこもります。
他の子どもたちも、飢餓や病気でどうせ死ぬのだからと
寿安の元に集まり、大人たちへの反抗が始まります。

寿安は立ち上がった南目の大人たちと一緒に戦い
代官所を襲って勝利をおさめます。
しかし、勢いに乗った蜂起軍は寿安の制止を振り切り
略奪を始めます。

それでは寿安がやろうとした事とは違います。

寿安は一人、仲間と離れ山の中へ入ります。



戦争はどちらの側にも言い分があって
どちらの側にもそれぞれの正義があります。
そして人を狂わせます。


寿安が最後にたどりついたものは…
「寿安さん」喜平の幼子が呼んだ声音を思わず真似ていた。
大勢の病んだ子どもらが皆そう呼んだ。
今ここにいる「寿安」が、やっと現実(うつつ)のことに感じられた。
幼い頃は耐えがたいものを感じていた呼び名は、
いつの間にか少しの抵抗も感じられなくなっていた。
蜂起でも、傷寒でも、赤斑瘡でも、多くの命が目の前で消えていった。
死こそが実は永遠の本源であり、
生は一瞬のまばゆい流れ星のようなものに思われた。
その光芒がいかにはかなくとも、限りなくいとしいものに思えた。



この作品の救いは恵舟先生と寿安です。





実はこの作品の前に恵舟先生を書いた「黄金旅風」という作品があるそうです。
そちらを読んでからこちら、という感じなのでしょうが
なんと私の利用する図書館には置いてありません(--;
なして?
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by koharu1002 | 2008-11-05 22:48 | こんな本、読みました