小春日記

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「天国はまだ遠く」

瀬尾まいこさんの「天国はまだ遠く」を読みました。
d0045063_213432.jpg千鶴は鞄に必要なものだけを詰めた。
行先は決まっている。
優柔不断な自分にしては
すぐに決まった。

誰も私を知っている人がいないところ。
うんと遠くて、でもすぐに着けるところ。

それは濃い海と濃い空を持つ日本海地方。
そこは私が最後に訪れる場所になる…

保険の営業をしていた千鶴は、人のよさが災いしてか、
契約がなかなかとれず、ノルマを達成できない。
上司に責められ、まわりからは嫌味を言われて辛い日々を過ごしていた。

根がまじめだから、仕事を休む事も辞める事もできないままに、
なんとかなるとだましだまし暮らしていたが
いよいよ身体が心が、そんな毎日から解放されたいと願うようになった。

千鶴は貯金を全部下ろし、会社の上司の机の引出しに辞表をいれ
三年暮らした一人暮らしのアパートを整理して
自殺するために見知らぬ遠い街へやってきた。

日本海に近い町の駅に降り立ちタクシーに乗るが
明確に行き先を言わない千鶴に困って
運転手は山奥の民宿に連れて行く。

そこは何年に一度しか宿泊客のこないような民宿だった。

千鶴は医者に処方してもらった睡眠薬を
二週間ぶんを一度に飲んで布団に入った。
もう目覚める事はない、はずだった…


この作品は180頁に満たない短い作品です。
この序章ともいえる部分は30頁ほど。

この後、千鶴はなんという事もなく目覚めるのですが
その部分がすごくいい^^

「目覚めは爽快。深い深い眠りの後、きっぱりと目が覚めた。
爽やかな朝、窓越しに太陽の光が見える。
雲が出ていないのだろう、太陽の光はいつもより濃く、
部屋の中がすっきりと明るい。
こんな清々しい朝を迎えるのは、何年ぶりだろうか。
最近はずっと、浅い眠りと重い眠りを繰り返していた。」

これが自殺に失敗して目覚た朝の文章だとは…


千鶴は丸一日眠り続け、普通に目が覚めてしまう。
自殺に失敗した千鶴は、この田舎の民宿で
宿主の田村という三十過ぎの男と、何をするともなく過ごす。

朝、起きて散歩にでる。
道で出会ったおばあさんに挨拶する。

時に強引に船釣に連れていかれ
時に鶏小屋の掃除をし、
集落の酒盛りに参加してぐでんぐでんに酔う。
酔って道の真ん中で賛美歌を歌い、吉幾三を歌う。

そんな生活が千鶴を変えていく。

しかし、千鶴は気づいてしまう。

「私はこの地が好きだ。
朝露に湿った道を歩くのも、夕焼けにそまる枯れ枝を見上げるのも大好きだ。
葉の匂い、風の音、きれいな水、きれいな空気。どれも捨てがたい。
美味しい食事に、心地よい眠り。この生活にも身体が順応している。
古い民宿だって、鶏たちだって気に入っている。
だけど、ここには私のするべきことはどこにもない。
自然は私を受けいれてくれるし、たくさんのものを与えてくれる。
でも、私はここで何をすればいいのかちっともわからない。」

そして千鶴は旅立っていく。


これはとても面白かったです。
ところどころに噴き出すような千鶴と田村の会話があったりして^^

いつかは帰ってくる、という含みをもたせた終わり方もよかったです。


瀬尾まいこさん、好きですねぇ。
癒されました^^
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by koharu1002 | 2008-05-21 23:02 | こんな本、読みました