西加奈子さんの「黄色いゾウ」を読みました。
夫の名は武辜歩、妻の名は妻利愛子。
お互いを「ムコさん」「ツマ」と呼び合う都会の若夫婦が、
田舎にやってきたところから物語は始まる。
背中に大きな鳥のタトゥーがある売れない小説家のムコは、
周囲の生き物(犬、蜘蛛、鳥、花、木など)の声が
聞こえてしまう過剰なエネルギーに溢れた
明るいツマをやさしく見守っていた。
夏から始まった二人の話は、ゆっくりと進んでいくが、
ある冬の日、ムコはツマを残して東京へと向かう。
それは、背中の大きな鳥に纏わるある出来事に導かれてのものだった―。
「BOOK」データベースより
初めて読む作家さんです。
母と前に行った古本屋さんで見かけて
帯の「いつか、この小説の『ツマ』役を演じてみたいです」の
宮崎あおいさんの言葉に惹かれて購入しました。
不思議な印象の作品です。
感受性のとても強いツマと、心に深い傷のあるムコさん。
お互い愛し合っていて、必要としあっていて
でも、少しずつすれ違ってしまう。
ムコさんは心の傷と向かい合うために
一人東京へと向かいます。
一人になったツマがどんどん元気を失っていく様子は
読んでいるこちらも辛くなります。
ツマが壊れてしまう前にムコさんには帰ってきてほしい、
そう強く願いました。
「なんかおくれ」いつもそう訴えるカンユさん。
社会の窓全開のアレチさん。
耳がかゆくなると雨が降るセイカさん。
不登校で田舎にやってきた小学生の大地くんと
大地くんが大好きでちょっぴりおマセな洋子ちゃん。
ツマをとりまく人々(人だったり、動物だったり、物だったり)が
とても新鮮です。
この人とでなければならない…
そういう人に巡り合えたムコさんとツマ。
心の深いところでつながっている二人。
アレチさんが「わしは、セイカを、好いとる。」と言ったように
「ツマを、愛している。」とムコさんはツマに言えたのかしら…
言えたとしたら百点満点ですね。